先日、Tokyo Net Radioというラジオ番組の収録がありました。番組パーソナリティを務めるのは、朗読など、語りの表現活動をされている菅野秀之さん。
当日は、吉祥寺のスタジオで収録。ネットラジオは公開後、いつでも聞くことができる形式なので、部分ごとに録音していくのかと思っていたら、30分の番組を通しで録音していく、一発勝負とのこと。番組内では様々なコーナーがあって、菅野さんの朗読タイムもあるのですが、その間も至近距離にいるので、咳き込んだりしないように、呼吸に気を使ったり。
自分の伝えたい内容も数分のうちに収めなくてはという緊張感。つっかえたり、同じ言葉を繰り返したり、わたわたしましたが、菅野さんの柔らかな語り方に助けられ、なんとか無事収録を終えました。
今回、一発勝負の録音というのが新鮮でした。音楽を録音するときは、最高のテイクを残すために、少しでも気になる所は部分ごとに録り直すことがあります。そして、最近のデジタル技術の力を借りれば、録音後に、リズムのずれや音程のブレも、かなりの精度で修正できたりもします。この「リセットが利く」という環境、便利なことだけど、怖いことでもあると思っていて。
「リセットが効く」ので、最終的な決断が不要になる。そうなると自動的に、その瞬間ごとに注ぐ集中力は薄まっていく。そして「やり直しが利く」という条件の下では、訂正することを前提に行動してしまう傾向もあるのではないかな。
便利な技術が身近に存在している現在は、それらを使わないのは難しいけれど、ただただ便利に流されるのではなく、得られること、失われることに対して、意識的でありたいです。そんなときに思い出すのはこんな文章。
旅行を数多くしていると、そこにはいくつかの哲学が生まれてくるものだが、僕にとっては「便利なものは、必ずどこかで不便になる」というのもそのうちの1つだ。村上春樹 / サラダ好きのライオン P73
ラジオ収録内容から話がそれてしまいましたが、今回のラジオでは、organic stereoの活動について、最近のマイブームとして料理のことについて、大好きな本「旅をする木」についてなど、お話させてもらっています。
聞き返してみると、菅野さんの声の良さに対する僕の細々とした声に、苦笑いしながらも、「お話をする」ことの奥深さを感じられる経験でした。そして、菅野さんによる朗読という表現の可能性、おもしろさも感じることができました。
↑こちらから聞くことができます
(第42回放送 2013.9.7 UP分にあります)